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通算12号 有楽町かわら版 2000年(平成12年)4月1日 (季刊)
新聞営業本部長
横山 明

 いつかは行ってみたい所はどこかというアンケートがあれば、私は蘇州の寒山寺と答えたいと思っています。

 高校時代に履修した「漢文」は受験勉強の科目でしたが、李白とか杜甫とかの漢詩には心をうつものがありました。

 社会人になって唐詩選などの拾い読みをするようになりましたが、その中でも張継の「楓橋夜泊」は私の好きな詩です。

月落ち烏啼いて
霜天に満つ
江楓漁火
愁眠に対す
姑蘇城外
寒山寺
夜半の鐘声
客船に至る

 寺の開祖寒山和尚の親友である拾得が日本に布教に来ていたことへの親しみに加えて、この七言絶句は、日本で維新の志士を中心に好まれた歴史を持っていますが、本家の中国での評価はそれ程でもないようです。

 結句にある鐘の音は夜には撞かないので事実と異なるからというのが理由のひとつと聞いたことがあります。

 明治時代には寒山寺の鐘の修復に日本から寄付をしたそうですが、どうも我が国のほうの思い入れが強いようです。

 上海に近いこともあって寒山寺は今でもツアー旅行の目玉のひとつですが、この地を詠んだものにはもうひとつ、宋の詩人陸放翁が郷里を捨て蜀に向かう際に作った「楓橋に宿る」があります。

七年到らず
楓橋の寺
客枕依然たり
半夜の鐘
風月
未だもちいず
軽がろしく
感慨するを
巴山
此より去って
尚お千重
(せんちょう)

  これには河上肇の名訳がついています。

ななとせぶりに
来てみれば
まくらにかよう
楓橋の
むかしながらの
寺の鐘
鐘の響きの悽
(かな) しくも
そそぐ泪を
しめしかし
身は蜀に入る
客にして
巴山は遠し
千里の北


こうした詩を見る度に、いつかは行ってみたいと考えますが、いっぽう遠くにありて思うほうが良いのかと思ったりする複雑な心境です。


第12号 (発行日:200041日)
有楽町かわら版
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