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第三者意見書(詳細版)

レビューの手法

本意見書は、株式会社日本製紙グループ本社(以下「日本製紙グループ」)の依頼を受けて、「サステナビリティ・レポート2006」について意見を提示しています。ここでは、

の方法によって、日本製紙グループおよび同社のステークホルダーにとっての重要な課題についての取り組みを評価しています。意見書では、取り組みおよびサステナビリティ・レポートの内容について全般的な意見をまず述べており、さらにAA1000保証基準の基本原則(重要性、完全性、対応性)を参照し、これに基づいてコメントしています。

※ AA1000保証基準は、イギリスのAccountAbility社が提唱しているCSR報告書の基準です。特にステークホルダーの観点からCSR報告書を評価するものであり、企業のステークホルダー・エンゲージメントを推奨するためにAA1000シリーズを発行しています。

報告内容についての意見

日本製紙グループでは、木材という自然資源を原料とする事業の責任を果たすために、原材料調達に関する方針を明確に打ち立てています。特に海外からの調達についてステークホルダーの監視の目が厳しい中、この方針のなかにステークホルダーとの対話の推進も盛り込んでいます。まず調達方針の策定の段階から原案を公開し、パブリックコメントを得てそれを反映させたという点で、エンゲージメントの姿勢が評価されます。昨年はこの新しい調達方針に沿ってアクションプランをたて、今後展開していく取り組みを具体化しており、これからの着実な展開が期待されます。

労働安全に関しては、製紙工程で労働災害が起こりやすいことから「事故ゼロ」に向けた徹底した対策の意気込みが伝わってきます。安全対策はこれまでも展開してきた取り組みですが、さらなる事故撲滅に向けて社員ひとりひとりの意識の喚起といった基本的な予防策を今一度実施しています。それでも起こってしまう死亡事故について、実状を公表することでアカウンタビリティを果たすとともに、社員の意識の引き締めのうえでも役立っているといえるでしょう。

今後改善すべき分野として、工場と本社、グループ会社と本社との管理上のスムーズな連携が必要です。現在のマネジメントでは、個々の重点管理は現場レベルで遂行されていますが全社での情報統合やスキルの共有の面で不十分なところがみられます。例えば環境面について、現在では工場レベルでの環境負荷低減の取り組みやそのためのシステムは行き届いていますが、グループ全体として統括するマネジメントが不十分です。地球規模での環境問題に企業グループとして対応するには、グループレベルでの方針を打ちたてそれに沿って生産現場を位置づけるという統合した体制が必要になっています。工場間の業務のばらつきも、これによって改善されます。これは環境マネジメントだけでなく、経営管理全体にいえることです。内部統制の仕組みづくりが要請されている折ですので、今後は全社統括体制に力を入れていただきたいです。

重要性:

ステークホルダーにとって重要な情報が記載されているか
NGOは日本製紙グループにとって最も重要なステークホルダーであり、彼らの関心事に対応する活動は同社のCSR活動の最重要課題です。原材料調達への取り組みについては昨年の活動はこの報告書に記載されていますが、基本方針から現在までの活動をウェブサイトと冊子の両者をうまく活用してもう少しわかりやすく報告した方がいいでしょう。
その他の報告については、それぞれのセクションを設けて取り組みの内容を記述しています。これらの活動について、目標を社員で共有しその成果を確認するためにKPI(主要パフォーマンス指標)の設定は重要です。KPIはステークホルダーに対して内部の努力を示すという点で情報開示の接点といえます。報告を見る限りでは、各ページのタイトルのしたに一般的なデータの掲載があり、どれをKPIとしているか明確でありません。読者は業界全体の情報よりも、企業がどういう活動をするかKPIから知ろうとするのであり、この点開示していく情報の整理が求められます。

完全性:

報告している情報は必要な範囲を含めているか
報告の範囲は主要事業についての関連会社を含めたバウンダリーまで広げる必要があります。現状では日本製紙のみにとどまる報告もまだ多く、今後関連会社に本社と同じレベルでのCSR展開を進め、またデータも集積していくことが求められます。また日本製紙内でも工場と本社の情報システムが完全に連動しているとはいえず、データ収集に問題がないようチェックを十分に行う必要があると思われます。もちろん情報の開示だけでなく、CSR活動についてグループ全体で取り組むことが前提であることは、いうまでもありません。

対応性:

ステークホルダーの懸念に対応しているか
調達方針の策定にみられるように、懸念を提示してくるステークホルダーに対し、受身でなく自発的な行動をとられています。これまでの対応についても、寄せられる要望について聞くだけでなく、現地の状況確認や関連自治体から事情収集し対話するなど、問題を認識し懸念に向き合っています。方針策定後もアクションプランをたて活動の内容を示しているところは重要です。ステークホルダーからの理解を得るために、これからも対話の努力を続けることが求められます。サプライヤーへの調査も対話のひとつであり、今後実質的な内容が伴うSCMを展開してください。
一方、従業員については各種人事制度を整えているものの、具体的に従業員満足についてのエンゲージメントをされているかが弱いようです。制度があってもそれが社員の意識向上や能力開発、また働きやすさにつながっていなければ、意味がありません。社内の活性化についても、CSRの一環としてとらえることが必要です。

2006年8月

署名)株式会社 創コンサルティング 代表取締役 海野みづえ